フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「20年前のアクシデント その2」

前回のつづきです。

営業車のコロナで高速道路を運転中に居眠りしてしまった。障害物を発見してパニックブレーキと急ハンドルで、サーキットの狼のジャンピング・ターン・フラッシュさながら障害物を回避したものの、予想を超える横Gで頭を右ウィンドウにぶつけてしまった。

とりあえずコロナを路肩に止め、危険なアルミハシゴをどけようとしたがあまりの大きさに躊躇していると、近づいてくる車がある…、のつづき。

…なんと近づいてくる車はパトカーだった。

この高速道路は交通量が少なくスピード違反をする者が多い。取締りの覆面パトカーもずいぶん走っている。このパトカーもおそらく取締りのために走ってきたのだろう。

パトカーもアルミハシゴに気付いて減速している。路肩に停まっているわたしのクルマを見てハシゴと関係があると思ったのだろう。赤灯を回してわたしのコロナの後ろに停まった。

「持ち主?(はしごの持ち主?)」、

と聞いてきた。

「コロナにあんな大きなハシゴは積めません」、

で…カクカク・シカジカ。事情を話した。

「危なかったね〜」、

と高速隊の警察官は慰めてくれた。

居眠り運転していて気づくのが遅れたとは言わなかった。

はしごの処理はパトカーに任せて走り出した。遅れを取り戻すために先を急ぐ必要があったのだ。

 

走り出しても、まだ動悸がしている。頭も混乱している。

幸いコロナにトラブルはない筈だ。タイヤも大丈夫だろう(一応、前輪に異常がないかタイヤを足で踏んで確かめた)。

パニックブレーキといえどもロックはしていないと思う。ブレーキペダルを一気に踏込んだが100km/h前後だったからロックするまでいかなかったと思う。実際スキール音は聞いていない。ちなみにこのコロナにはABSは付いていなかった。

大事故にならなかったがこのアクシデントの原因は居眠り運転だ。居眠りをしていたことで障害物の発見が遅れ、故に直前に迫った障害物に慌てて分別なくパニックブレーキをかけ、ステアリングを急激に大舵角で切ってしまった。やはり原因は居眠り運転に尽きる。

しかし、自分の運転操作で頭をサイドウィンドウにぶつける、などということがあるだろうか。

高校生で自動車免許をとって以来、自分の操作で自分の頭をサイドウィンドウにぶつけるなどということは一度もなかった。

ドライバーはどんな急ハンドルであっても操作するに及んで発生するであろうGに備える。急ブレーキをかけて助手席の人があわててダッシュボードに手をつく事はあるが、ドライバーそんなことにはならない。発生するGを(自分が発生させるGを)見越して踏ん張っているものだ。

今回は違った。居眠りから覚めてすぐパニックブレーキとハンドル操作してしまったから発生するGを予測する間もなかった。

それともう一つ。

普段フワフワのコロナのサスペンションとロングライフだけが特徴の細いラジアルタイヤが、パニックブレーキで荷重が集まった事でびっくりするくらいのステアリングゲインを発生させたことだ。

馬鹿にしていたコロナ(いや馬鹿にしていない。愛着はあったが性能的に期待していなかった、と言い換えよう)の秘めたるその能力は想像もしなかった。なにせこのコロナはわたしの首をなぎ倒すほどのコーナリングフォースを発生させたのだ。

なんど思い返しても情けないアクシデントだったが、しかしこのアクシデントはわたしにとって重要な教訓を植え付けてくれた。