フェラーリ試乗させてくださいの巻2「フェラーリディーラーに行く」
電話に出た受付嬢とおぼしき女性は、
「ただいま、メールの担当者が出掛けております」
と、言うので戻ったらメールを確認するよう言って電話を切った。
翌日、メールの返信があった。
結果、F12、FF、458の3車種同時に試乗できるのは不可能だった。F12なら◯月◯日、458なら◯月◯日、という具合で、試乗日が分かれてしまうという。年に数回行われる試乗イベントであれば別だが平日の試乗では不可能らしい。
高価なフェラーリを全車種ディーラーが常備するのは難しいだろう。試乗車をディーラー間で持ち回りするのは高級輸入車ではよくあることだ。これは納得する。
ということでFFを試乗希望からはずし、F12と458にして試乗希望を出した。
ちなみにフェラーリの試乗車で事故を起こすと自費弁償である。場合によってはこの自己弁済を成約する書類に一筆書かされらしい。
おそらく保険会社が試乗車の車両保険を引き受けないのかも知れない。
フェラーリの車両保険は高いと聞くが、どこの誰とも知れない人が乗る(二十代の事故歴有りのドライバーだって試乗に来るかも知れない)試乗車に車両保険をかけるといっても保険会社が引き受けないのだろう。
一筆書かなければ試乗できないとなれば書くしかない。でもこんなのはじめてだぞ。
試乗希望日は平日にした。別の用事がありそもそも一日時間を空けておいたのだ。
でも、試乗日まで10日以上ある。
う〜む。気がはやるのでディーラーにクルマだけ見に行くことにした。
まったくアポなしでぶらりとショールームに入っていく。フェラーリのディーラーに入るなんてはじめてだ。ディーラーには先客が2人いる。
なるべく堂々とした態度で入る。こそこそする必要もないが、威張る必要もない。中間で良いのだが、むずかしい。
「ちょっと見るだけです。いいですか?」と受付嬢に言うと、
「是非、ご覧下さい」、と笑顔で返された。
ホッ、よかった…。
先客の2人は試乗で来ているようだ。試乗車がディーラーの前に横付けされるとセールスマンにうながされて出て行った。わたしよりずっと若い。年齢は三十半ばのように見える。どういう人なのか知るよしもないが、あの若さでフェラーリを購入できるとはうらやましい。
そういえばフェラーリの画像を検索していると海外の特にヨーロッパのフェラーリオーナーや高級スポーツカーのオーナーの画像が出てくる。みんな若い。今はそんなもんなのか。むかし金持ちといえばおっさんばかりだったと思うが。
ショールームで458とFFを見る。やっぱりFFのデザインはきびしい。フェラーリという感じがしない。メルセデスのSクラスクーペを買うつもりの客がフェラーリのショールームを訪ねてFFを衝動買いすることはあるかも知れないと思う。
ということでFFの候補復活はなかった。
458イタリア。やっぱりかっこいい。アスファルトを削ぎ取るように低く伸びたノーズ、ひざ下すねのあたりにフロントバンパーがくる。やっぱり普通じゃないクルマだ。かっこいい。かっこいいけど、すごい目立つ。色が赤ならなおのことだ。
「気後れするわ」が率直な感想。
F12はこのディーラーにはなかった。FFはやっぱり候補にならなかった。458も見た限りではわたしにはきびしそうだ。458は一応、予定どおり試乗はしてみるがおそらく候補外なのは変わらない。と、なるとF12が唯一残った購入候補だ。
うむむ…。F12は今日、見られなかった。良いか悪いか判断がつかない。試乗を待つしかない。試乗して良いと思わなかったら買うフェラーリが無くなってしまう。
「これは良いことか、悪いことか…」
「良いことだ!」と頭の中で誰かが言う。
「そうだよね〜。そもそもフェラーリなんて必要ないじゃん。あんな高いクルマ買うなんて、バカじゃないの!」
また、自分で自分を説教している。
何十回と繰り返した問答をまた繰り返しつつ家に帰った。
※ヘッダーのF12の写真はBenoit Carsさんの了承を得て掲載しています。