「中国くるま事情4 中国人の職権乱用と労働意識」
横流しや不正には多くの場合、協力者がいる。単独では続かない、一人でやると危険なのだ。
ひとつの横流しの例を考えよう。
肉の生産業者のAが正規の肉100キロを肉加工会社Bに納入しに行く。
AはBに向かうあいだに正規の肉100キロから20キロを削ぎ落とす。そして隠し持っていた腐った肉20キロを正規肉に加えて、合成肉100キロをつくる。削ぎ落とした正規肉20キロは隠しておく。
食肉加工会社Bの買い入れ担当者は20キロの腐った肉が混じった合成肉であることを知りながら100キロの受領書をAに渡す。
Aは20キロの正規肉をどこかへ転売して代金を受け取る。
この代金の一部はBに渡される。
横流しには協力者がいる。
Aだけの単独犯行では腐った肉20キロが混ざった合成肉であることがいつか露見する。いや最初から不可能かもしれない。
これは危険な賭けだ。こうした行為は長く続かないし、多くの者はやらない。
横流しや不正は協力者、共犯がいてこそ長くつづけられ、長く利益をむさぼれる。
そして協力者、共犯者が多ければ多いほど露見しにくく安全に続けられるのだ。
中国で食あたりは珍しくない。日本からの長期出張や駐在者で食あたりを経験していない人はほとんどない。皆、通過儀礼のように食あたりを経験する。このわたしもそうだった。
食あたりのほとんどがおかしな食材と不衛生な調理が原因だ。
金型がこわれて頭を抱えている日本人技術者が食あたりにあった。
泣き面に蜂とはこのことだ。
横流しがはびこるもう一つの要因が上の事情に隠されている。
それは職権や権限の濫用と職権や権限の換金だ。
上の例では肉を自由に取り扱える職権と、納入物に受領印を押す権限の濫用があって成立している。
職権や阮元の濫用が横流しビジネスを成立させる。
中国では権限を使って商売することをよしとする。
権限を使って利益を得ることは当たり前であり、当然の権限(まさに権限)なのだ。
「汗水たらして働いて金銭を得ることなど下賎の者のすること、労働者のすることだ。人間は権限を持ちそれを使って金を儲ける。これこそ高貴な人間の生き方だ」、と中国人は考える。
日本人は権限を金に代えるなど卑しい行為だと思うが、中国人はまったく逆だ。
権限を使った金儲けは、横流しや不正の見逃しだけではない。
口利きで有利な人事を行ったり、商権を与えたりするのに使われる。
これこそ、「働かずに富を手にする」、理想の生き方だ。
横流しはやまないし、権力者の濫用はとまらない。
中国人の中国製品不信もとまらない。