フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「自動車ビジネスは危険なビジネスか」

前回、クルマの取扱説明書が厚くなったのは訴訟リスクに備えてのことだ、と書いた。そのつづき。

消費者に大量に物を売る、というのはとてもリスクを伴う商売だと思う。 見ず知らずの何を考えているかわからない大勢の人間に物を売って利益を上げるというのは、かなり危険な試みなのだ。

各社はサービス部門、サポート部門、取扱説明書専門の部署を設けて問い合わせやクレーム、訴訟に備えている。

以前、メーカーのサービス部門のクレーム対応担当者と話しをしたことがある、

「この部署の仕事をしていると人間不信になりますよ。実際、精神的にまいってしまうスタッフも多いんです」。

実は以前、ある製品の製造にたずさわり問い合わせ受付担当者になったことがある。

案の定、クレーマーが電話をかけてきた。(事前に販売数量、価格からクレーマーの発生数は予想できる)

「おたくの製品を使ってるんだが、製品の形状が悪いので私の電気製品がこわれた。その電気製品の金額11万円を補償してもらいたい」、

という電話だった。 あきらかに言いがかりだとわかる。製品の形状が悪い、と電気製品がこわれた、という因果関係の説明もあいまいだし、そもそもなんでそんな使い方をしたのか理解できない。

電話の主は声の調子から30代半ばの男性である。とにかく11万円を払ってほしい、しか言わない。そして何度も電話をかけてくる。とてもしつこい嫌な話し方をする。

「まぁ、私も忙しいのであさってもう一度、電話かけますから。あさっての午後ですよ…。◯◯さん(わたしのこと)いますよね? 電話、出てくださいね。逃げないでね。私あなたと話してるんだからさ…。あさってまでに11万円の補償の件、考えておいてくださいね」、

乱暴な言葉づかいはしないが、ねっとりとまとわりつくような話し方をする。 威圧せず嫌悪感を抱かせ、関わりたくない、お金を払って終わりにしよう、と思わせようとしているのがわかる。

ここで妥協して、お支払いします、などといったら大変だ。11万円は無理ですが2、3万ならお支払いしましょう、なども同じ。そんなことを言ったら、同じようなクレーム電話が一斉にかかってくる。 クレーマーは仲間うちで連絡をとりあい活動する。あの会社が払った、となれば一斉にねらってくるのだ。

その電話の主とは4、5回話しただろうか。事情は聞くが金銭の要求は断る、を繰り返しているうちに電話はこなくなった。おそらく他に矛先を変えた方がよいと思ったのだろう。