「フェラーリF12 berlinetta納車さる!」
ディーラーにF12を受け取りに行く。
電車を乗り継ぎディーラー最寄りの駅からスマホの地図をたよりに歩く。服はいつも土日に着ている服だ。わたしはオシャレなカジュアル服は持っていないのだ。
フェラーリのディーラーにはいかにもお金持ちそうな方がいる。服、クツ、カバン、腕時計、全部合わせると300万円だろうと思う人がいる。
私にとって今回のフェラーリはもっとも高額な買い物だが、その歩く300万円は別荘やらクルーザーやら持っていて、フェラーリなど別に高い買い物ではないのかも知れぬ。本日もそういう人がいるのだろうか(関係ないけど…)。
綺麗な受付のお姉さんに来意を告げると、おかけになってお待ちください、お茶は? などとしているうちにセールスマン氏が現れた。
注文のオプションリストの確認やら、アフターサービスの説明やら、フェラーリコンシュルジュやらの説明を受ける。
日本車だと1000km点検とか1ヶ月点検とかがあるが輸入車はそうしたものはない。1000km点検なし。1ヶ月点検なし。半年点検なし。輸入車だとこれ普通。
「1万キロか1年点検においでください。それまでそのままお乗りください」、
これが普通。フェラーリもほとんど同じだった。 説明を受けたり、色々な署名をしたりするうちにクルマが用意されたようだ。
「おクルマをお出しました」、
うながされて表に出るとF12が停まっている。これがわたしのフェラーリか…。
目の前には注文したボディーカラーのF12が停まっている。
F12を注文してから(する前からも)この買い物のある種の馬鹿らしさが頭から離れなかった。いつも引っ掛かっていた。
「なんて馬鹿なことをしているのか」、
そんな気持ちは常に横たわっている。それは昨日の夜も変わらなかった。
「700馬力? クルマは30馬力でも走る」、
自問自答はこの数ヶ月間ずっと頭の中を回っている。夕べ寝る前にこう思った。
「明日、自分のF12を目の前にすれば、そんな思いも吹っ飛ぶかも知れない。痛かった虫歯を治療して歯医者から帰る時のようにきれいさっぱり、『やっぱりフェラーリ、サイコーだぜ』と思っているかもしれない」、
そう思って寝た。
さて、その馬鹿らしい買い物の実物を目の前にして、わたしの気分は半分も晴れていない。
冷めてんな〜。わたし。
「まぁ いいさ。どんなにおもしろい物なのか(それとも期待はずれなのか)これから乗ってみればわかる」、
そう自分に言い聞かせた。
もちろん感激がないということはないのだ。端から見てわたしの顔は笑っていたかも知れない。しかし、半分はひどく冷めていた。
おっと、こんなわたしの内面を書いてもおもしろくもなんともないのでやめにしよう。 次回は半分の晴れた気分の方を書こう。