「フェラーリF12 berlinetta納車さる! その4 な〜んかヘン」
F12の室内には革のニオイが漂っている。あきらかに本革を感じさせるニオイ。最近のクルマではこうした本革然としたニオイは珍しいのではないか。
「本革だからニオイがして何が悪い? 最高級の本革だぞ」、
とフェラーリに言われている気がする。
まだ室内をじっくり観察していない。ディーラーでカギを渡されてすぐ走り出してしまった。もう少しあちらこちらを観察してから走り出せば良かった。走行中の今、計器盤くらいしか観察できない。明日以降じっくり観察するとしよう。
ステアリングの座りはわるくない。太いタイヤだがわだちに影響される感じはしない。いや、そもそもここの路面状態はそれほど悪くないのか?
渋滞を抜けてスピードが8、90km/hくらいに上がったがF12はまったく変わらない。安定感が増すことも、足回りがしなやかになることもない。3、40km/hで走っている時と変わらず道路の継ぎ目でドン、ドンと硬い反応がする。
車室内に流れ込む音も変化しない。ギアポジションは6速でエンジン回転は2000も回っていない。
渋滞はなくなったが交通量は多い。追い越し車線に90kmくらいで居座るクルマがいるので団子状態のまま走行する。普段であればこの状況は嫌なものだがF12に慣れていない今、それほど支障はない、というかむしろ今日はそれで良いと思う。
大雑把な印象だがクルマの前方に大きなエンジンの存在を感じる。 自分の足下から先に巨大なエンジンがあって車体先端は捉えられないほど遠くにある。けして前が重い、という感じではない。重みではなく振動や音から前方に巨大なエンジンの存在を感じるのだ。重くない、でも大きい。そんな感じだ。(あまり上手い表現じゃない)
この速度とエンジン回転数では感動するものは何一つない。ゴツゴツした乗り心地と、ボーッという室内に鈍くこもる排気音。
すこしアクセルを開ければ、ブォォ〜ンとこれまた鈍い曇った排気音とともに加速する。ギアは変速しない。エンジンの反応は鈍くないが別に鋭さは感じない。 加速力はどうというものではない。4リッター以上のクルマならこの程度の反応はする。
どこかに違和感を感じながら高速道路をしばらく走り続けて一般道に下りた。 混み合う一般道に合流し渋滞に巻き込まれる。 どこかに違和感を感じるというのはF12を運転しても、何も感じないからだ。
「こんなだったっけ? F12って?」、
そう思う。 何に対してそう思うか? 考えていて、試乗した時の感触の違いだと気付いた。
「試乗したF12ってこんな感じじゃなかった。もっと滑らかで、軽かった」、
そう気付いた。
「な〜んか、変だなぁ」、
まだオドメーターは100kmを超えたくらい。今日はエンジン回転を上げるべきではない。今夜ゆっくりならし運転の計画を立てるつもりだ。