「フェラーリF12 berlinetta納車さる! その5 F12、車庫へ」
「な〜んか、変だなぁ」、
正直言ってつまらない。
いや初めて自分のクルマとしてフェラーリに乗り悪い気分ではない。しかし緊張して身体がガチガチだ。楽しめない。F12にまったく感動もしないし感心もしない。
ボーボー、ゴトゴト。
腹に響く排気音は車室内の空気すべてを振動させ耳を圧迫する。硬いサスペンションは車体を揺らす。
信号で停止する。DCTギアボックスはブレーキを強めに踏むとアイドリング回転になる。ブレーキペダルから足を上げるとアクセルを踏んでいないのに回転が上がる。
「DCTってこういう制御だっけ?」、
今まで乗ったDCTギアボックス車の記憶をたぐるが思い出せない。
アイドリング回転になると排気音は一段低くなるのでほっとする。
やっぱりアイドリングの時はあまり騒々しくない方が良い。
午後4時を近くになり陽は傾いてきている。もう少しで車庫に到着する。 ひどく疲れているが本日の主題はこの車庫入れなのだ。
車庫の前にF12を停め、シャッターを開ける。車庫の周囲には誰もいない。
F12のドアを開け車外に出るとエンジンが低くうなっている。腹に響く音だ。
車庫に立てかけられたスコップや近くの温室のガラスが共振している。
F12の大きさと車庫の大きさを確認する。
まだF12の車両寸法を理解できていない、理解というか感覚が伝わっていない。ドライバーシートの位置からフロントエンドの距離が知覚できていない。車体の前端、後端、左右端、タイヤ位置が理解できていない。
あわててもしょうがない。一ヶ月もすれば感覚がしみ込むだろう、そう思い直してF12に戻る。
ウィンドウを開けて顔を出そうとするが、ほとんど顔が出ない。F12の車幅は1930mmある。コンパクトカーとは違うのだ。
サイドミラーだけでバックすることも出来そうだが初日の今日はウィンドウから顔を出して車庫入れする。シートポジションを上にそして前方に出す。そうすれば顔が出るはずだ(多分)。
しかし、シート調節のスイッチはシートの座面横に取り付けられている。慣れればめくら操作だが今日は手探りだ。慎重を期してドアを開けスイッチを目視しながら押す。 あまりに慎重すぎるがこれも初日の儀式として慎重を期すのだ(ゆうべそう決めた)。
シートの調節幅は大きい。シートはかなり高い位置まで上昇する。これなら小柄の女の人でも前が見通せるシートポジションがとれるのではないか。
ついでにステアリングも調節する。テレスコピックの調整量も大きい。申し訳程度にしか動かない物が多い日本車に比べると実用的だ。
シートは硬くクッションを感じさせる柔らかさはない。座ったからといって身体が沈み込むことはない。まだ2時間も座っていないからシートの印象を書くには早すぎると思う。
車庫の幅とF12の車幅は1.5m以上の余裕がある。車庫入れすることに不安はない。むしろ前後方向の余裕はそれほどない。 この車庫は車止めがない。漫然と下がると後ろの壁にぶつけるかも知れない。
さて、バックで車庫入れだ。 バックは…どうするんだっけ…。