フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「クルマにひそむ狂気について 激高」

前回のつづき(今回でやめます)。

ネクタイ姿のサラリーマンらしき男が信号で停まっている大型トラックのドアによじ登り、ウインドウ越しにトラックドライバーに怒鳴り始めた。

信号で停まっているまわりのドライバーも何事かと思っている。大型車はドアを開けるでもなくウィンドウを下ろすでもなく無視をきめこんでいる。

やがて信号が青に変わった。

おどろいたことに大型車はそのまま発進した。発進するフリではなく、そのまま加速していく。まわりのドライバーやわたしはそろそろとクルマを発進させる。いつ振り落とされるかわからない、車間距離をとらなければ危険だ。

大型車はどんどん速度をあげていく。しがみついた男の服がバサバサと風にあおられている。もし振り落とされたら死ぬかもしれない速度になっている。大型車のドライバーはどれほど危険なのか理解しているのだろうか。

大型車のドライバーの様子をうかがうことはできないがおそらく彼もまったく冷静さを失っているのかもしれない。

しがみついている男は強風にやられてさすがになにも出来なくなっている。男のクルマは乗り捨てられたままだ。後ろに停車したドライバーには迷惑だろう。2車線なのがせめてもの救いだ。

大型車は数百メートルを走って信号で停まった。

男は地面に降りて大型車から離れて歩き始めた。わたしの位置から男の表情は見えなかった。

わたしを含めたまわりのドライバーがホッとしているのがわかる。

信号が青に変わって一斉にクルマが発進した。事故にならずに済んだが、あのはるか後方の信号に置き去りにされたクルマまで歩いて戻るのは大変だろう。

なにか刑事ドラマの一シーンを見させられた気がしながら営業先にクルマを走らせた。

 

ほんのちょっとしたきっかけで感情が爆発するドライバーがいる。

クルマを運転すると人が変わる、という人もいる。わたしもクルマに乗ると自分が強くなったような気がする、ということはあった。

そういえば、前々回の高速道路の路肩を暴走した若いドライバーはその典型だろう。

高出力車がドライバーを変貌させる。どんな走り方もできる、どんな行為もできる、高出力がそう思わせる。

近頃はめっきり減ったけれども、わたしかつてそうした走り方をするときがあった。相当な速度差で追い越し車線を走る。はっきり言ってとなりのクルマを速度差5km/hで歩くように抜くのと、30km/h差で抜くのでは、30km/h差で抜く方が気分が良いではないか。

F12を運転していると700馬力を超える高出力にかまけた異常な運転をしてしまう衝動を感じる。そしてわたしが15歳若ければF12でどんな危険な行為をしたか、と想像する。

 

先だって自動車評論家が箱根ターンパイクを走行中にポルシェで事故死した。速度超過は事故の第一原因だろう。大幅なスピードオーバーがなければ死亡事故にいたることはなかったはずだ。

自動車評論家であるから一般道で大幅な速度超過がどれほど危険か、対向車や歩行者にとって凶器以外のなにものでもないのは知っていたはずだ。

でも、やるのである。

わたしもF12で暴走し大破させたりすることが絶対にない、と言い切れないと思っている。