フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「F12 冬の始動直後」

年が明けて関東はいい天気が続いていましたが、昨日から雨が降って気温も下がってきました。関東がもっとも寒くなるのは1月から2月。寒さはこれからが本番です。

ということで、今日はF12の冷間スタートについて書きます。

この冬、わがF12の車庫は気温5℃以下になる朝が何日かありました。この車庫は温度が下がりやすく(まわりに温度の高い建物がない、風が強くあたる、車庫のまわりに土が露出している、とか)、冬の朝はがっつり気温が下がります。朝、車庫に入ったとたん身が凍える感じがします。

こうなればF12のエンジンも温度は5℃とか4℃とかのはず。手で触れると痛いくらいの冷たさでしょう。

この金属の塊にいきなり気化ガソリンを供給しスターターで始動させる。クルマのエンジンとしては当たり前のことだけれども、機械的には大変なストレスがかかります。

わたしは樹脂成形金型の仕事をしていたことがあります。成形前、金型は加温しておきます。冷えた金型にいきなり樹脂を射出するなんとことはありません。それでも(あらかじめ加温しても)取り出し始めの成型品は不良になります。

で、あるからして、冷えきったフェラーリの12気筒エンジンを始動させる、というのはなんとも気が重く感じがします(普通のクルマの4気筒エンジンならそんなことは気にもならないけど)。

ま、フェラーリの本拠の欧州だって冬は氷点下になることはよくある。東京郊外の気温が寒すぎることはないはず。第一、走らなきゃバッテリー上がっちゃうし。やっぱりエンジンかけて走り出そう。

 F12の取扱説明書は、始動後油温が70℃以下ならエンジン回転を4000以下に抑える、という記載があるだけで冷間走行を否定していない。

実際には気温4℃というなかでもエンジンは問題なく始動する。クランキングが長くなるといたこともない。

F12の始動クランキングについて書くと、明確にクランキングを感じさせる時間がある。実際にはスタータースイッチを押して1.52秒といったところだ。クランキング音も大きいのでその1.52秒は明確に感じられる。で、直後にとんでもない爆発音とともに12気筒エンジンが目覚める。静かなところで老人が近くにいるならば始動は待った方が良い。驚かせて心臓発作を起こすかも知れない。このF12の始動音の大きさは458のそれとはまったく違う。

で、この始動直後のエンジン回転は1800くらいで若干不安定な感じがする。エンジンだけでなくF12の色々なところがミシミシボキボキいっている感じだ。人間だって運動する前すこし関節を回したり背伸びしたりする、ちょうどあの感じである。

このまま車庫のなかに排気ガスをためるわけにはいかないから、DCTのギアを1速に入れF12を車庫の外に出す。

1速に入れてアクセルをソロリと踏む、

「バゥウォォ」、

回転が不安定に上下する。F12に、「まだ早えんじゃねぇか?」、と言われている気になる。

F12の車体が車庫の外にでたところで、左右のシフトパドルを同時に引いてニュートラルに戻し、パーキングブレーキをかける。

F12の大ボリュームのエンジン音が車庫の外に響き渡っている。