「フロントアップとコントラストステッチ
F12のフロントサスペンションはインパネのスイッチを押すことで40mm上昇する。たいていの段差には有効だ。いまのところフロントのエアスポイラーをぶつけたことはない。
いや、正確にいうと一回、ガリッと音がしている。
よく通る道で急な起伏がある小さなT字路。山の南斜面を利用した住宅街で段々畑のように家が建ち並ぶ幅6メートルくらいの道。強い下り傾斜のT字路でハンドルを切りながら曲がる。いつも通り走ったつもりだったが少し速度が出ていたのだろう。ガリンッという音がした。一瞬、肝を冷やした。
車庫に帰って点検してもキズは見当たらない。はいつくばってのぞき込んでもそれらしいキズは見えなかった。
車道と歩道の段差はあらかじめ注意してフロントアップをしてゆっくり行うのだが、日常でも思いのほかギリギリになるところもあるのかも知れない。
でもこすったのはその一度だけ。自宅近くの踏み切りの段差も問題なし。ちなみにF12のフロントオーバーハングは963mm、リアは951mm。
フロントアップは時速40キロ以下なら作動する。作動時間は3秒くらい。40mm上がりきるとピッという電子音がする。速度が40キロ以上になると自動的に正規の高さに戻る。この時も正規の高さに戻りきったところで電子音がする。
このフロントアップ、地下駐車場で作動させると車高の上昇に合わせてライトが上向きにならないようにピクピクと光軸調整も同時に行われるのがわかる。ちょっとおもしろい。
思い出したことをひとつ。
わたしはセールスマン氏のすすめでダッシュボード上部にコントラストステッチを入れたのだが、このコントラストステッチが意外なほどフロントウィンドウに映り込んでわずらわしい。
F12のダッシュボード上部の革は一般的なダーク色にした。この部分に明るい色を使うとフロントウィンドウに映って視界を遮ることを過去の経験から知っていたからだ。一般的にもそうした選択をしている人が多いと思う。メーカーによってはそもそもその部分に明るい色を設定していないところもあるくらいだ。
で、セールスマン氏。ダークカラーだけではさびしいと思ったのかダッシュボード下部に選択した明るめのレザーと近い色のコントラストステッチを勧めてきたのだ。
「なるほど、そういうコーディネートもあるんですね」、
フェラーリを注文するというだけで舞い上がっていたわたしはこのセールスマン氏の提案にあっさり乗ってしまったのだ。
ところがこの明るいコントラストステッチ、ダークなダッシュボードの中ではっきりとフロントウィンドウに映り込む。常に。ず〜っと。F12を受け取ったその日は舞い上がっていて気付かなかったが、翌日気がついた。
「やってしまった…」、
一時は黒いマジックペンでステッチ一つ一つを塗りつぶす(というか黒インクをステッチに染込ませる)ことを考えた。
今年の夏、中天からまぶしい光りがダッシュボードにふりそそぐようになったら、この邪道を実行するかも知れない。
フェラーリのダッシュボードにしがみつき一心不乱にペンで何かを書き込んでいるおっさんがいたら、「ブログいつも読んでます」と声をかけてください。