「フェラーリF12ベルリネッタの価値 その2」
前回のつづき。
F12のV12エンジンは6262cc、リミッターが作動する最高回転は8700rpm、最大出力は8250rpm 時735ps(541kw)、最大トルクは6000rpm時690Nm
0-100km/h加速は3.1秒、0 – 200km/hの加速は8.5秒、最高速度340km/hとマニュアルに書いてある。
いつだったかF12の助手席に家族を乗せて強く加速した。
急加速は違反対象ではないからF12に乗るたびにどこかでやる。大音量で急加速とは少々えげつない感じだがこれくらいしか日常でF12を楽しめることはないのだ。もちろんマネッティーノはスポーツモードでトラクションコントロールはONにしている。急加速といっても一般道では限度がある。計測すれば0-100km/h加速で5秒くらいの加速だと思う。
その時、助手席の家族はなんと言ったか、
「やめてよ、気持ち悪いから」、
彼女はクルマに興味がない。「クルマは乗り心地が良い車種がイイわね」、それくらいのものだ。
急加速は気持ち悪いのだ。
運転しているわたしはどうか…。振り返れば5秒間はステアリング握りしめて、「ぐうぅ…」、とばかりに耐えているだけだ。
この加速Gをすげー、と楽しむかどうかは人それぞれだと思う。
なぜ、F12に日常でのスポーツカーの良さを感じられないのか、それはおそらく740psや最高時速340km/hだからだ。
740psを標榜したがゆえにその能力に合わせた車体、サスペンション、剛性、精度に仕上げなければいけなかった。だから先にあげたような日常的な、BMWやメルセデスベンツのスポーツタイプが「う〜ん、イイねぇ」とうならせるシチュエーションでもF12はゴリゴリ、グリグリ、ビシビシ、無味乾燥な味気ないセッティングになってしまっている。
フェラーリの12気筒車として、量産車の最高スペックを標榜しようとするがゆえに無愛想、不寛容に成り果ててしまったということかもしれない。
まるで色気も愛想もない女性アスリートのように。
(いまさら気付いたのだが、手元にあるオーナーズマニュアルの性能記載は735ps(541kw)。一般には740ps(545kw)と言われている)