フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「車重を感じる。クルマのおもしろさ」

クルマのどこがおもしろいか。

クルマって動くものである。ある重量物が加速する、減速する、曲がる。ドライバーは車重を感じる。この車重を感じるか、というのがクルマの醍醐味だと思っている。

エンジンの反応が良いとか、コーナーで安定しているとか、ブレーキが良く効くとか、それはクルマの良し悪しの話しであって、クルマを動かす楽しみとはちょっとちがうと思う。

車重の軽重は問わない。軽かろうと重かろうとどっちでもいい。軽いという重量感でも良いし、重いという重量感でも良い。(軽い、を良しとするライトウェイト信仰のようなものは偏狭だと思う。重い車重には重い車重でしか味わえない感覚があり、それを否定するのは自動車の楽しみを狭めていると思うのだ(自分はSUV嫌いのくせに良く言うわ)。

話しがそれた。クルマの重量を感じる根源的な経験を思い起こしてみる。

自転車に乗れるようになったのは小学校に入るか入らないかの頃だった。ひざを擦りむき、電信柱に突っ込み、ドブにはまりながら、なんとか乗り方を覚えると自由自在に自転車が動く。足に力を込めれば込めるほどチェーンを伝ってタイヤが地面を蹴り、身体を内側に倒せば倒すほど回転半径は小さくなった。自転車の重量感は加速の時くらい。横方向の重量感はほとんど感じなかった。

成長してバイクに乗る。自転車では感じた事がない横方向の重量感を股ぐらに感じる。身体を傾ければ曲がるってほど単純でない事を知る。

そしてクルマ。加速も減速も回転もすべて身体運動と別のところで発生し、いくら頭を傾けようと、いくら上体を寄せようとクルマは反応しない(あたりまえだ)、ステアリングとペダルを操作することでしかクルマは反応しない。

シートに座り自分が操作したステアリングやペダル操作で発生した加減速Gや横方向Gをシートに身を任せたまた受け止める。なんだこりゃ? なんつう機械任せの安楽。身体関係なしの頭脳ゲームかよ。

自転車やバイクでは身体の中心に感じられた車両の重心が、クルマでは全然違うところにある。なにこれ? 自転車→バイク→クルマと来て、車両の重心がバイクとクルマの間で決定的な断絶があると気付く。そしてクルマの重心やクルマの重みを如何に感じ、加減するかがクルマの運転の肝だと知る。

あぁ、このクルマという重い金属の塊を動かすおもしろさはなんだ。あちこちが沈んで伸びて変形する。その動きの複雑なこと、重くて大きな物がかしぎながら動くおもしろさは。

 

高校生3年の夏にクルマの免許をとり、オンボロ自家用車を乗りはじめた。

中学時代からの仲間がいう。クルマよりバイクだよ。スズキRGB-Γ(ガンマ)だ、ホンダMVXだ、いややっぱりRZ-Rだ。バイク乗りの友人が言う、

「クルマなんかおもしろくもなんともねぇよ。乗せられてるだけじゃん」、

わたしはバイクにそれほどのめり込まなかった。(わたしが通っていた高校は3ない運動が強く行われていた)

スズキGSX400インパルスに乗る彼の意見に半分は同意したが、半分は「お前はクルマのおもしろさを感じられないだけ」、とも思った。

以来、クルマの運転が楽しい。そしてこれからもクルマの重量感を楽しもうと思う。