フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「自動運転 狂想曲 その2」

前回のつづき。

定年間近、自動車会社の電気技術者のはなし。

自動運転車の普及とともに自動車の個人所有は減るという想定らしい。

「自動車会社がタクシー会社のように運行サービスで儲けるとか、シェアリングシステムで儲けるとか。あと、駅近くでオートパーキングシステムを運営するとか、そんなことを考えてるらしいよ。実際にすでに投資をはじめている。」

自動車会社がクルマを売らずに儲けようとしていると…?

「個人所有が減る、イコール、クルマが売れなくなるって直結はしないと思う。人間がクルマを利用する距離が減らなければ、自動配車とかシェアリングで期間あたりのクルマの走行距離は増える」

…どういうこと?

「自家用車だと一年に1万キロ走らないクルマってたくさんある。でも自動運転ですき間なく利用すれば期間あたりの走行距離は増える。自動運転車が自家所有のクルマに比べて耐用年数が急に高まるということでもなければ経年劣化、耐用限界による買い替え需要は変化しない。車両あたりの利用年数は短くなる、と想定してるみたいよ」

ふ〜ん、そんなに減らないんだ。

「自動車販売台数の減少は数パーセント程度だと踏んでるみたいよ。まぁその通りになるか分からないけどね。…で減った数パーセントをさっきのサービスとかで補おうと、そういうことらしい」

「人間がクルマで移動したい距離を減らさないことが重要。自動運転のクルマを今以上に利用したいと思わせることね。

こどもの送り迎えだって無人で出来るとなれば親の負担はどれほど減るか。

駅からバスで30分、バス停から徒歩10分なんて住宅地が、バス停で待つこともなく駅から自宅の前までタクシーより安く自動運転車が利用できれば、自動車会社が宅地開発するかもよ」

へ〜っ。

…スポーツカーとか、どうなりますかね。

「最近、感じない? 高速道路でクルコン(インテリジェンスクルーズコントロール)使ってるクルマ増えたでしょ。あのシステムってワンテンポ遅れた、じれったい感じがある。前車が発進しても(前車が加速しても)自分のクルマの発進(増速)がワンテンポ遅れる。あと車間距離の開け方も微妙に自分の感覚からズレてる。最初はそういったじれったさが気になるけど、やがて気にならなくなる。

なぜって自分でわざわざアクセル踏んで発進、ブレーキって操作から開放されるメリットの方が大きいから。違和感なんかより楽というメリットに慣らされていく。

さらにその次の段階は、クルコンが付いていないクルマの発進やブレーキがひどく慌ただしく、せせこましく見えてくる。人ってそんなもんよ。

自動運転車の数が増えればやがて、自立運転のドライバーの走り方が自動運転車の群れの中で異物化していく。一定の車間距離、一定の加速・減速で走る自動運転車群の中でグキグキせせこましく加速減速して、車線に割り込む自立走行のクルマは鬱陶しい存在になりかねない」

自立走行車が異質な存在になると…。共存、並立は続かないですか?

「ラッシュの電車の中で変に動く活動的な人いるでしょ。混み合う車両の中では一定レベルまで意識を下げて目的駅までの苦痛を最小限に抑える。そういう人たちの中で異物のように動く人。自動運転車群に紛れ込んだ自立運転の車両はそれと同じになるかも知れない。」

わたしも7年間都心に向かうラッシュアワーの電車に乗っていたから、言わんとしていることはわかる。そして混雑しはじめた高速道路でインテリジェンスクルーズコントロールを使うクルマが増えていることも実感する。