フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「軽自動車」

軽自動車。まだ若かりし頃(いまをさかのぼること30年前です)、悪友の実家の軽トラに乗せてもらい、とある河川敷をぶっ飛ばしたことがある。

当時その河川敷は勝手に作ったモトクロッサ−場(もどき)やらラジコンカーサーキット(エンジンバギー)やらキャンプ(バーベキューですな)やらやりたい放題で、野鳥の巣をこわす、とかゴミを放置する、とかなにかと悪評が立つところだった。

そこで悪友の実家の軽トラを走らせた。

「パンクしたっていいべ」、

スピードにすれば30キロにもならない速度でも、すさまじい上下動と振動がする。

ドドドドッ、ガガガガッ、バキバキッ、ゴンッ

鉄板だらけの軽トラの車内にあらゆる濁音が響く。荷台に載せっぱなしにしている工具箱やらロープが動き回っている音もする。最後の「ゴンッ」は僕らがサイドウィンドウに頭をぶつけた音だ。

「ワハハ、舌かむから喋んなょ」

550cc、2サイクルエンジンの軽くてイイ加減な音が聞こえる(悪口ではありませぬ。あくまでイメージね)。

ブッブッ・プゥ〜ン  べッべッべッべッ  ブッブッ・プゥ〜ン。

「ブッブッ・プゥ〜ン」、はクラッチをつないで加速する時の音。

「べッべッべッべッ」、はアイドリングの時の音。

滑り台のような急傾斜を登ったり下りたり、水たまりに突っ込んだり。ハチャメチャな運転をしながら、

「タイヤって意外とパンクしないもんだな」、

とか能天気なことを二人でしゃべっていた。

エコもマナーのへったくれもない暴走行為だった。

 

あれからから30年。この夏、軽自動車で3日間、600キロを走った。

営業車で軽自動車を使ったことはない。こんなに長距離、長時間を軽自動車で走ったのは初めてだった。

使ったのは日産オッティ。ターボなしの4AT。

40馬力以下だけど高速道路も90km/hくらいは平気。加速力は80km/hを超えると鈍くなるけど支障があるほどではなく、大型車やバスの風圧を受けてもよろめくこともない。

カーブではかなりロールする。でも大きなロールが来るからスピードを出そうという気にならない。結果としてロールはしない(させない運転になる)。ふむ、この問題、解決。

ロードノイズが大きいとかシートが小さいとか、思わなくはないが、そもそも価格が安いんだからしょうがない。

土地勘のない場所を走るには小回りが利く軽自動車の便利さを実感する。小さな車体は路肩に寄せてカーナビをいじったり、道をたずねたりする時も気がねがない。

知らない土地をめぐる時は軽自動車に限る。免許とってから30数年しての発見。

途中、大雨に降られた。雷ゴロゴロ、稲光ビカビカ。数日前から降り続いていた雨で川はあふれんばかりの泥水が橋脚にぶつかっている。夕暮れの道は冠水状態でノロノロ。走り出すとホイールハウスの中で盛大に水を跳ね上げる音がする。大粒の雨が薄っぺらい鉄板の屋根を叩く。耳のすぐ横のサイドウィンドウに横殴りの雨がうちつけ、強風でウェザーストリップが圧迫されブスーという音がする。停まっているのにクルマが揺れる。

自然に翻弄されてる小さなクルマ。なんか気持ちがいい。

人間は一生懸命、工夫してクルマを作ったけれども、雨の日、風の日、山道、坂道、いろんな場所と環境の中を走っていく。つねに外の状況に影響される。だから揺れようが、跳ねようが、しょうがない。

家にクルマがなかった子供の頃、土砂降りの中でも当たり前のように歩く。躊躇することもなく歩く。その横をはねを上げてクルマが走り去る。

どんなクルマでも歩くよりずっと便利。ベンツだろうと軽自動車だろうと。

クルマというものの便利さと、自然に翻弄されちゃう小さな軽自動車の微妙なバランスは面白い。

う〜む…。ハスラー、買おうかなぁ…