「メルセデスベンツSL550(R231)に試乗す」
前回のつづき。SL350(R231前期型)に試乗したけれども、それほど良いと感じなかった。その後、
「SL550に乗ってみてよ」、
とアドバイザー氏のたっての願いで2週間後、SL550に試乗した。
550と350は別物だった。
受け取ったSL550のエンジンをかけたところ、
「おぉっ…」、
これは350とは違う…、そう感じた。
エンジンの存在が遠くに感じる。350より1メートルくらいエンジンが離れたところにあるような感じ。存在を隠すように遠くで静かに回っている。350は常にエンジンの音や振動を感じる(けして嫌な音や振動ではありませんが)。
発進してもエンジンはほとんど高まったような感覚がない。太いトルクを発するエンジンが広大なフロントフードの中からSLを動かしている。
走り出しはスムーズそのもの。トルコン式オートマチックはDCTのようにエンジン出力がエンケージする感触はまったく無く、ゼロ静止からシームレスで動き始める。
「スポーツカーとして、この感じは不思議…」、
走り出してみてサスペンションの動きがふつうのクルマと違う。
路面というかアスファルトが柔らかく滑らかになったような感じ、いやタイヤのトレッド面がグニュグニュと柔らかく凹んで起伏を飲み込んでしまっているかのような感じ。
これが大型セダンだったら別に驚くに値しない。でもシート位置は低くステアリングはドライバーに正対するように立つドライビングポジションはスポーツカーそのもの。
ステアリングは広大なフロントフードを一気に回頭させる。クルマの重心が低くて動きまわったりしない。ロングノーズショートデッキのデザインはFRスポーツカーの典型的なそれ。
しかしこの路面と接するやわらかさはなんだ。
「どうです。違うでしょ350と。サスペンションの仕様が違うんです」
アドバイザー氏が助手席から聞いてくる。
このなめらかさと静かさがありながら、スポーツカー独特の感触が備わっている。こういうスポーツカーは今まで乗ったことがない。
その時、乗っていた。V8ミッドシップカーに疲労していたわたしにとってこのSLの性格はとても興味深く映った。
オープンにしてみた。当日は初夏で強い日差しが真上から照りつけていた。
大型のオープンカーは初めてだった。マツダロードスターやZ3、SLKはオープンにした時もキュッと締まった印象があるが、SLは正反対の広さを感じさせる。
大きさを感じさせるスポーツカーというのも良い、と思った。
ということで、後日ディーラーに出向きSL550を注文することになったのだ。
一つ重要なことを…。
前回と今回、書いたSL350と550はR231の前期型です。現在販売されている後期型とはすこし仕様が異なります。現在販売中のSL後期型についてはまた後日あらためて書くようにします。