フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「SL550とF12 その3」

前回のつづき。

SL550とフェラーリF12、それぞれ箱根を走った時の印象をまとめてます。

SLはサスペンションの設定をコンフォートモードにしたハイスピードコーナーリングこそ真骨頂だと思う。

ハイスピードでありながら常にワンテンポの猶予をもちつつ操作できる。やわらかく快適でそれでいてかなりのハイスピードでカーブを抜けていくことができる。この安定性と安心感。ハイスピードであっても緊張させすぎない。このまま疲れずいつまでも走っていられる気がする。SLはハイスピードロングドライブに最適だと思う。

F12はそうはいかない。実際にはF12は安定して恐ろしいことは起こらない(多分。相当はやいスピードで走っても)。しかしドライバーは常に硬い乗り心地に揺すられ、ロードノイズと爆音(わたしはF12の音が良い音と思えない)にさらされる。ステアリングの感触はガッシリとしてタイヤはあたかも空気が入っていないかのように変形を感じない。

そして前回書いた通り、ステアリングは終始軽く、手応えが変化しない。センター付近だろうと切り込んでいようと手応えは変わらず際限なくステアリング操作を受け付ける。アクセルは踏めば踏むだけすさまじい馬力で加速する。

このなにものも寄せ付けない剛性感はある意味、無感触とも言える。そしてこのことこそが、F12は油断ならない恐ろしいクルマだ、とドライバーを身構えさせる。

 

F12で箱根なんぞをしばしドライブした後、富士山を眺めながらこう思った。

わたしゃ、一般的なドライバーでしかない。サンデードライバーよりましだと思うが、やっぱり一般的なドライバーでしかない。クルマや路面から余すところなく感触を感受することは辛い。クルマのほうで処理できるものはクルマに対処してもらうほうがドライビングに集中できる。

ラリードライバーだったら乗り心地が悪かろうが、振動が激しかろうが、パワーを余すところなくタイヤに伝えて早く走れるクルマがいい。でも普通のドライバーはそんなクルマは早かろうと馬力があろうと運転してられない。

おっと、ひとつ書き加えることがある。F12とSLでは特徴的な感覚差がある。意外に思われるかもしれないが、SLのほうがF12より低重心に感じる。SLはまるで海底をなめるように泳ぐエイのようなしなやかなロールが大きな安心感を与えるがF12は重心が高くて硬いと感じる。これなんなんだろう。

衰えはじめたドライバーがぐちぐちとスポーツカーのことを語るのはこれくらいにして、次回はSLのいろいろな装備について書くことにする。