フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「SLの走行モード(ダイナミックセレクト)について」

クルマのサスペンションやエンジンなどをドライバーが色々と選択できるようになったのはいつ頃だったか。

SLもダイナミックセレクトなる呼称でそれが出来るようになっている。

前期型はサスペンションの設定がスポーツとコンフォートの2種、エンジン設定とシフトスケジュールがエコ、スポーツ、マニュアルの3種で選べる。サスペンション設定とエンジン・シフトの設定は別々のボタンで行うから、サスペンションはコンフォートでエンジン・シフトはスポーツという組み合わせもできる。ちなみにSLのステアリングに取り付けられたシフトパドルは小さくて操作しづらいからあまり積極的にマニュアルにすることはなかった。月に一度、エンジンを高回転で維持して「垢落とし」する時に使うくらいだ。

後期型はサスペンションの設定、エンジンの設定、シフトスケジュールの設定、ステアリングの設定がそれぞれコンフォート、スポーツ、スポーツプラス、カーブの4シチュエーションごとにまとめられている。トランスミッションは別ボタンでオートとマニュアルを選択することができるからどのシチュエーションでもマニュアルのパドルシフトが選択できる。

コンフォートはエコモードとも言え2速から発進し、早いタイミングでシフトアップしていく。サスペンションはソフトでステアリングは軽い。エンジン音もおとなしい。思うにこれがSLの標準モードだと思う。

カーブは車体のロールを抑えるようにサスペンションが働く。この機能、ある程度大きなコーナーを曲がると実感する。高速道路の出入り口の旋回ではっきり作動しているのがわかる。外側サスペンションが伸びて車体を平行にしようとするから、サスペンションが無くてロールしないカートのような安定感とは別種のものだ。車体のロールが無い(まったく無いということはなくて多少はロールする)といっても身体にかかる横Gが消えるわけではない。前、前回書いたドライビングダイナミックシートと併せて横Gによって外側に流れていく身体を支えるのが目的だろう。SL400はドライビングダイナミックシートが付かないから、二つの機能を実感したかったら550を選ぶしかない。サスペンション以外の設定はコンフォートと変わらない。

スポーツ、スポートプラスでは1速発進になりシフトアップは鈍く、エンジンの回転上昇を受け付ける。ステアリングは重みを増し、サスペンションは固くなる。エンジン音はアイドリング時にボーボーとうるさく、回転が上がると「クォーン」とワザとらしいくらいイイ音をさせる。シフトスケジュールの設定、サスペンションの設定はSLとしては硬めだと思うが、ピッチングの動きが抑えられ車体の安定感が増す。エンジン音はちょっとやりすぎでもう少し大人しい方がいい。ステアリングが重くなるのは余計なお世話で重くする必要などない。そもそもステアリングが重くなることがなぜスポーツ性を高める、高まったように感じる、と定義したのか理解できない。スポーツとスポーツプラスの差はサスペンションの設定、エンジンの設定、シフトスケジュールの設定がより過激になる。ステアリング設定は変わらない。

このダイナミックセレクトの操作はシフトレバーの後ろに設けられたスイッチで行うのだが、このスイッチはよくない。まずスイッチを目視しなければ押せない位置にあるのがダメだ。こういうのは走行中にメクラ操作できるようにしてほしい。それと一回押すごとにスポーツ、スポーツプラスと順番に一方向で切り替わっていくから、一回押し過ぎたらまた何回も押して一周してこなければいけない。表示はメーター内に出るシチュエーションの文字表示とセンターディスプレイにSLを斜め上から眺めたイラストが映し出されることで示される。ちなみにインディビデュアルはドライバーが各項目を自分好みに設定登録することができる。

スイッチの位置の悪さは前期型も後期型も同じ。使ってみた感想は前期型の方がシンプルでいいし、SLの性格から言えばこの程度のもの充分だと思う。

日の暮れるのも早くなってきたので次回はSLのヘッドライトについて書こうと思う。