フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「SL400と550、どっちがいい」

前期型も後期型も暗くなってからエンジンを始動すると、ヘッドライトが点灯し光軸を下から水平に持ち上げ、さらに一度を中央に寄せてから前方を照射する。毎回のこの儀式を行うが、これを見ると高いヘッドライトが付いてんだなと思わせる。

SLのライトはこれくらいにして。

現行SL(231後期型)の400と550どちらが良いか、との質問があった。あくまで個人の感想として良し悪しを述べると、550の方ががよいと思う。

車重は550の方が約100kg重い。8気筒の重みと低速トルクがSLの性格に合っていると思うのだ。

V6の400、V8の550、ともに6000rpm程度が頭打ちで高回転型ではない。550は低回転から分厚いトルクが湧き上がり4500rpmくらいまで怒涛の出力を感じさせるのに対して、400は低回転からターボでトルクを出すが、回転を上げてもその先はあまり盛り上がらない。回転を上げても出力が高まっている感じがしない。一方で音だけはまことに勇ましく演出される。メルセデスは無味乾燥なエンジンだとわかっていて、ことさら音の演出をしたのかも知れない、と勘ぐっている。

SL400のエンジンに限らず最近のエンジンは回転の上昇の面白さなどまったく感じられぬ人工的なものが多い。燃費競争をしなければ生き残れないのでこれはしょうがないかも知れない。

それにくらべて550はまだ回転を上昇させる楽しさが残っている。実際には低回転からトルクがあるので回す必要はないのだが、4000rpmくらいまでの増速感は強烈に高まる。で、4000rpm以上の高速回転域でもエンジンの頭打ち感はなく素早く回転の上下させ、いわゆる“ツキ”のよさをみせる。回転の軽さが高回転域でも変わらないのは実際にドライビングの楽しさを広げる。ということでエンジンの面白さで550に軍配があがる。

9速ギアボックスも550の方がスムーズだ。400は出力がない分、下のギアを使おうとする。結果ブンブンと唸るし変速ショックも550より大きい。SLのシフトパドルはとても小さく(VWゴルフと同じくらいの大きさ)、感触もピクピクとスイッチ然としたもので、フェラーリのシフトパドルのそれには比べるべくもない代物だ。

前期型は7速ギアだった。400にしても550にしても9速はやり過ぎなのではないか。前期型の7速で十分だと思う。燃費の為だと思うが乗っていて7速の方がシフトショックがなく洗練されていたと思う。

乗り心地も550の方がいい。400は突き上げ時の音も大きい。車重の違いからなのか400は軽くはね上げられ、そしてビシンッと落ちる感じがする。550の方が鷹揚に受け流し、色々なところから響く音(キシミ音だったり、ビビり音だったり、タイコ音だったり)も一段静かになる。

価格はSL400が1260万円、SL550が1698万円でその差438万円。かなりの価格差だけれども、できる限り550を買うべきだと思う。

自動車雑誌などは同じ車種なら小型エンジンの方を善しとする傾向が強い。「(排気量の)小さい方で充分」、みたいなことを言う傾向があったが、日本人の倹約好き、清貧幻想、貧乏性が入り混じっているからだろう。