フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「あらためて フェラーリF12の最後 その2」

フェラーリF12を手放した経緯を振り返っております。そのつづき。

F12の700ps超えの高出力は一般道の走行では弊害でしかない。それは700psだけでなく600psも500psも同じだと思う。

こう書くと以前このブログで取り上げた、乗用車の出力は60ps、80psで十分、という話しに聞こえるかもしれないが、でもがそうではない。大人4人が余裕を持って座れて、かつ十分な安全性を担保するクラッシャブルゾーンを持ち、快適性と走行性能を兼ね備えたサスペンション、空調、装備をもった車両は2tを超えるだろう、その車両が胸のすくような加速をするならば350psは必要なのだと思う。

ひとつ付け加える。

ここでいう胸のすくような加速は0-100km/h加速でせいぜい7〜8秒くらいのものだ。7〜8秒では遅いという人も多いと思う。実際スポーツカーやスポーティセダンを標榜する車の多くは3〜6秒台で加速する。

でもこれはあくまで加速記録をとった場合であって、その時ドライバーはアゴをひいて身体をこわばらせて、ステアリングを握りしめて加速を味わう。これが心地よいというのは競技や職業でクルマを操る人だけだ。

ふつうの人が自分の身体が前に進んでいく心地よさは0-100km/h加速で7〜8秒くらい、場合によっては10秒くらいだったりする。

さらに言えば加速記録をとるような全力加速の場合、路面状況によってはかなり危険なのは言うまでもない。普通のアスファルトには砂が浮いていたり、白線が引かれていたり、マンフォールや凹凸やワダチがある。これらが強力な加速をしている左右にタイヤに影響を与える。だから一般道においては700psはもちろん500psを出すことは危険を伴う。

やっぱり500psや600psは不要なのだ。

 

F12は高出力をうたい、実際にその出力を活かせるようにチューニングされているように思える。しかしそのチューニングゆえに無骨で無味乾燥な走行感になってしまっている。

ステアリングの剛性感は高い。だが高いだけ。サスペンションは煽られることはない。ビシッと踏ん張る。でも硬い。そこにニュアンスや思慮は感じられない。サスペンションやタイヤが路面の凹凸などの影響をいかに受け止め、いなしているかを感じさせない。

もっと高い速度、もっと強いGがかかればそれは現れるのかも知れないが、一般道でその機会が訪れることはない。

内装は量産型を使わない素朴な形状と精密さに欠けるハンドワークが希少性を感じさせて好ましかったが、いかんせん大もとのデザインが緩く、緊張感や凝縮感に欠けるものだった。

センターコンソール下にぶら下がったような空調コントローラーの造形とギアセレクター周辺のデザインと丸ボタン3つの配列は大型トラックの内装デザインと変わらない。「しっかりしろよデザイナー!、といいたくなるデザインだった。

メーターグラフィックもこれといって特徴はなく。右メーターに映し出すナビゲーション画面は不便極まりない。唯一、カーボンファイバーのパーツは表面にクリア層をたっぷりもたせてその奥にファイバーの編み込みがうす暗く見えていて出来が良かった。