「パニックブレーキの経験」
パニックブレーキの経験はどれくらいありますか。
一概にパニックブレーキといっても速度や道路環境でいろいろ分けられると思う。
わたしが言うところのパニックブレーキとは飛び出してきた歩行者や犬猫を避けるために踏んだ急ブレーキというだけでなく、ブレーキを踏んで停まれるか、停まれないか、車体の安定どうなるか考える間もなく踏んだブレーキのことを指す。
そうした定義のパニックブレーキだとすれば、あなたの経験したパニックブレーキは時速何キロでどんな道路環境だったのだろうか。
わたしの運転も歳をとるにしたがい慎重になりおとなしくなった。若い頃はスピードを出す事が多かった。
いまは見通せる安全をたしかめて速度を上げる。若い頃はその「見通せる」の部分がかなりいい加減だった。
はっきり記憶に残っているパニックブレーキはいまから20年くらい前のことだった。
車種はトヨタコロナ。
当時一部のクルマにはABSが装備されつつあったが、このコロナにはなかった。
考え事をしながら運転をしていた。
工業地帯の道路で片側2車線、歩道も広い。信号と信号の間も長くスピードは出しやすい状況だった。
午後の早い時間で交通量はあまりなかった。天候は晴れていた。記憶ではすこし車内が暑いくらいの日だった。
前後に数台クルマが走っている状況でスピードは60キロを超えるくらいの速度だった。
考え事をしながら運転していたので信号に気づくのが遅れた。前方不注意だったと思う。
顔は前を見ているが視認していないような状態だ。
となり車線のクルマが速度を落としているのが側方の視界に入った気がして赤信号に気づいた。
パニックブレーキになった。
瞬間の判断はこんな流れだ。
となり車線のクルマの減速に気づくと同時に前方の赤信号を見てブレーキを踏んだ。蹴っ飛ばすように踏んだ。
信号の停止線までの距離を目測したかと問われれば、計っていない。
コロナのタイヤは即座にロックした。時速60キロでロックしたタイヤはすごい音をたてた。
サイドウィンドウの下側に白煙が見える。ロックしたタイヤが焼けているのだと気づいた。
ドサっという音がして車内に置いてある物が一斉に前に移動するのがわかる。
信号の手前の路面に起伏があった。ノーズダイブしているからよく見える。盛り上がってまた下がる起伏だ。
サスペンスが縮みきっている状態でどんな衝撃がくるのか、と思った。車体がバウンドする。ドシンという音が車体の下から聞こえる。フルバンプした音かもしれない。
タイヤのスキール音がとまらない。幸い車体は左右にブレずに直進を保っている。シートベルトが胸を支えているのがわかる。
となり車線のドライバーはスキール音に驚いているだろうな、と思いながら停車した数台のクルマの脇を通り過ぎて停止した。
タイヤから上がった白煙が停止したコロナを追い越して交差点の中に拡散していく。
停止した位置は信号の停止線より手前だった。自分の前にクルマはなかった。前走車はなかったのだ。(それも見えていなかった)
パニックブレーキ中の状況は観察していたが対処はまったく行っていない。
ただブレーキペダルを目一杯踏み込んだだけ。ハンドルとシートベルトで身体を支えていた。
冷や汗とみっともなさがこみ上げる。 反省しきり。
でも、なぜパニックブレーキになったのか。