フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「デザインで記憶に残っているクルマ 8」

このテーマもこれぐらいにしようと思います。

子どもの頃、テレビでフェラーリに乗った警察官が泥棒グループのシトローエンとカーチェイスを繰り広げる映画を見た。あらかじめ見ようとチャンネルを合わせたわけではなくて、休みの日(もしかしたら夏休みや春休みの時期だったかもしれない)テレビのチャンネルを回していたら偶然、放送していた。だからストーリーもちゃんと覚えていない。

たしか、泥棒グループの自動車逃走がうまくて警察が捕まえられない。普通のパトカーじゃなくフェラーリで追いかけろとかそんな内容でフェラーリが登場することになるのだが、出てきたフェラーリは308GTBでも512BBでもなく古いフェラーリだった。内心、「なんだ?このフェラーリは」と興味が半減したのを覚えている。

で、見ているうちにフェラーリよりも犯人グループが乗るシトローエンが魅力的に思えてきた。さほどカッコよくもないフェラーリが追いかけるシトローエンはカエルのようなデザインだが、このシトローエンがはげしくロールしたりピッチングしたりして画面の中を動き回る。その動きの良さが気に入り始めた。あるシーン(もしかしてラストのクライマックスシーンだったか)で後輪がカバーされホイールハウスのないシトローエンが車体を沈めて疾走する姿がとてもカッコよく見えた。

映画を見ている最中はそのクルマがシトローエンだとわからなかった。さっそく本をめくって調べてみる。あのカエルのようなデザイン、後輪が見えないデザイン。

見みつけたのはシトローエンSM。

一度しか見ていないテレビ映画だから記憶は曖昧だった。以来、わたしはシトローエンSMを強く記憶するようになった。いつだったが近所の自動車整備工場にSMが止められていた。前輪にウマをかませらされ一、二ヶ月そのままにされている。「あの映画で見たシトローエンSMだ」、そう思い込んでながめていた。スペックも頭に入っていてマセラティV6エンジンを載せた大型高性能前輪駆動車。自動車少年にとって実用性の高い前輪駆動車はあまり触手を動かされないがSMのスペックは魅力的に見えた。デザインもすごくいい。高性能エンジンを示すような大きなエンジンフード、後ろに行くにしたがってすぼまっていく水滴型のデザインは翼の断面のようで、すこしクラッシックな未来感が漂っているように思えたのだ。

以来、シトローエンはいつか買いたいクルマになった。BXが生産中止に近づいたころ最廉価グレードが199万円という価格で販売されていた(と記憶している。そう、たしか199万円だったはず)。じつはこれを買おうか真剣に悩んだ記憶がある。当時最貧のサラリーマン生活をしていたが、頭金になるくらいの貯金はあった。これをはたいて買おうと考えたのだ。結局、日々の慌ただしさの中でタイミングを逸して購入には至らなかった。

この貯金はのちの事業資金にまわって露と消えた。もしもあの時、BXを買っていたらわたしの人生は変わっていたのかもしれない。

お金を貯めてクルマを買う、休日クルマを乗り回す楽しさを覚えて、また違うクルマを買う。

ちかごろこうしたクルマ消費生活は流行らないと思うが、当時はこれが普通の若いサラリーマンの生活だった。

あのとき、稼いだお金でクルマを買う生活をBXでしたならば(そうした生活を習慣にしたならば)、いまとは違った人生になっていたと思う。

後、知り合った知人が長年BXを乗っていた。もう20年近く乗っている、とその頃言っていた。故障が多くて、いままで新車を買った時と同じくらい修理代に消えました、などと笑っていた。

クラッシックカーの趣味もレストアの趣味もないが、淡いブルーのCXはいいなぁと思う。この前も都内で見かけた濃紺のC6も優雅な感じがしてとてもよかった。

C6、買っておけばよかったなぁと悔やまれる。DSブランドでも良いので大型ハッチバックサルーンを出してくれないだろうか。いっそパワートレーンはハイブリットPHVが良い。音もなく走り去るハイブリッド車はシトローエンのイメージに合っていると思う。

くだんの映画をネットで調べたら「フェラーリの鷹」というものらしい。

今回ネット検索してわかったが映画に登場したのはシトローエンDSでSMは出ていなかった、あとから本でみたSMの印象が入れ替わってしまったのだ。