フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「中国の日本人自動車技術者」

以前の仕事で知り合った取引先の課長が転職した。40歳を過ぎたところでの転職。就職先は中国の自動車会社だ。

中国企業への人材流出がつづいている。ただ本人達に流出という意識はないかも知れないので、この書き方は失礼にあたるかも知れない。

日本のエレクトロニクス系企業から韓国企業への転職は15年くらい前から顕著になり始め、08年のリーマンショック後は自動車会社と自動車関連会社も加わった。

これからも中国の自動車会社に移る日本人技術者は続くのではないかと思っている。

以前は日本人が中国企業に勤めることによいイメージを持っていなかった。

実際に知人数人が中国企業に転職したが長く続かなかった。2、3年。短いと1年で辞めてしまう。

「日本人技術者にうちの会社を指導してほしい」、

と中国人社長に乞われて転職したのに、短い間に軋轢が生じて辞めざるを得なくなる。

辞めるまでの間、何度も同じような愚痴を聞いた。

「技術やノウハウを教えても、ルールやモラルが低い従業員が多ければ成果に結びつかない。教えても従業員がコロコロ辞めて行く。いつ辞めるかわからない人間にいくら教えても無駄なんだ」、

日本人技術者と従業員の間に中国人マネージャーを入れてみたとか、従業員の派閥の長を抱き込んでみたとか、色々な手を使っても上手くいかない。

中国人経営者(台湾人や香港人経営者も)せっかちなので成果が上がらないのに苛立つ。その苛立ちを他の中国人幹部に漏らしたりすると、大抵、

「あの日本人は教え方が変だ。高い給料を払う必要はない」、

などとやっかみや悪意のある意見を言う者が出てくる。このあたりは中国人の日本人への普遍的な怨念のような心理が現れてややこしい。こうなると大抵、日本人は孤立して辞めるはめになる。

わたしが知っているエピソードはこうしたものが多い。 しかし、最近は事情が少し異なるらしい。

この数年(この二三年)中国の大手企業はそれなりにまっとうな企業運営、ガバナンスを取り入れて働きやすくなって、そこで働く従業員も質が高いらしい。(ただ、製造現場はあまり変わっていないそうだ)。

日本人だけでなく欧米の技術者も働いている。

報酬も日本企業と変わらない。ただ労働条件は日本や欧米よりきびしく土曜も仕事をすることが多い(日本は祝祭日が多く週休二日も定着しているので休日は多い。現代の日本人はけして働き者ではありません)。日本のようなぬるま湯な感じはなく、しっかり成果を上げなければ報酬も地位も危ういそうだ。

日本でトヨタは年間145万台を売り、7位の三菱は10万台を売っているが、中国では年間10万台以上を生産する自動車メーカーが45社あり一年の販売数は2400万台を超える。

中国の自動車メーカーは自国の自動車産業に望みを持っている。だから欧米や日本の技術者に高い報酬を支払ってでも技術向上を目指す。

彼らが転職することで技術、ノウハウ、人脈、知的財産、自動車関連企業や材料メーカーの研究開発情報、有力下請け企業の技術など貴重な情報が渡っていってしまうのは日本の自動車メーカーにとって決して有意なことではない。

 

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