フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「SL550のシートについて」

今回はSLのシートについてです。

シートはR231の前期型、後期型で違いはないように思います。SL400(350)と550は同じシートが取り付けられていて、ドライビングダイナミックシート機構とマッサージ機構の有無だけが違うようです。

で、そのSLのシート。デザインは非常に立派。フェラーリF12とくらべてずっと凝っていて見た目はまことに高価に見える。いつだったか軽自動車のシートの購買担当が「輸入高級車のシートでうちの軽自動車、買えちゃいますよ」と笑っていたのを思い出す。

ところがこのSLのシートの背もたれが駄目なのだ。

1時間くらい乗り続けているとクッションの薄さが気になってくる。部位にすると腰椎のあたり、背骨の下の方、腰に近いあたりですな。

乗り始めて数ヶ月で気付いた。わたしのSLの乗り方は1時間ちょっとで乗り降りすることが多い。それ以上というのは遠出したときや渋滞に巻き込まれたとき。

渋滞に巻き込まれてウンザリしている時に痛さに気付いた。以来、この痛さの原因はなんだろうとシートと身体を細かく観察してみた。どおやら、ランバーサポートの上のパンヤが薄いのではないか、と思いあたった。

SLのシートのランバーサポートは高いクルマらしく色々調節できて、その張り出し量とともに上下位置の調整もできる。シートの調整はセンタークラスターのディスプレイのシート画像を見ながら行う。

こう言うとなかなか凝ったスグレモノに思えるが、可動するランバーサポートの上のパンヤの量が少く薄いのだ。

こんな理由か。これでは30分またがっていると尻が痛くなる小型バイクの安物シートと同じではないか。

 

シートの評価は身長、体重、体形、骨格、筋肉の付き方、好みのドライビングポジション、乗車時間によって評価が変わる。

わたしはシートポジションを前に出す。他人が運転した後のクルマに乗ると大抵シートを前方に調節しなければならない。シートバックはあまり倒さない。ステアリングは近めにし高くする。身長は176cm、体重は72~4kg。

メルセデスベンツの本国、ドイツ人のガタイはデカくて185~190cm、90~100kgは普通。クルマに乗る人は身長140cmから200cm、体重40kgから130kgまで幅広い。シート設計者は大変だと思う。

いつだったか、日本によく来るオーストリアのビジネスマンは見上げる程に背の高い男だった。190cmはあっただろう、体重はおそらく100kgではないだろうか、でも50歳をすぎたこのビジネスマンは日本に来ると軽トールワゴンのレンタカーで移動している。「快適だよ。日本の軽自動車は車内が高いから好きだ」と言っていた。高身長の彼にとって軽トールワゴンは快適らしい。

そう言えばこの夏、軽自動車に長時間乗ったが小さなシートにほとんど不満はなかった。軽自動車のシートに文句を言わず、SLのシートにケチをつけると言うのはシート設計者にしてみれば承服できないかもしれない。想像だが軽自動車とSLのシート、原価は20倍以上違うのではないか。詳しい方いたら教えて下さい。

次回はシートの調整機構やドライビングダイナミックシート、シートベンチレーションについて書きます。