フェラーリのブログ

フェラーリに関わった顛末

「最近のクルマの取扱説明書は」

わたしがクルマを運転しはじめた頃の自動車取扱説明書はホチキス止めだったと記憶する。せいぜい40ページくらいではなかったか(確かめたわけじゃないがおそらくそんなものだった)

F12の取説はどれくらいの厚みなんだろう。

ちなみに現行の日産マーチの取扱説明書(ナビゲーション、オーディオはのぞく)は約260ページ、GT-Rは約330ページ、トヨタヴィッツは約440ページ、クラウン(ハイブリッド)は約470ページあった。 (GT-Rの取説は最初の方に「GT-R特別項目」っう記載があってなかなかカッコいい)

どのクルマもかなり厚い。これにナビゲーションの取説やメンテナンスブック、サービス拠点リストなんかが加わったりする。

 

メーカーには取扱説明書を作る専門の部署がある。メーカーで取り扱う製品全般を総括しているのだ。用語や用法も厳密に管理している。車種ごとに部品名や用語に違いがあるということはない。

ワイヤレスリモコン、リモートコントロール、似たような言葉だが実はメーカー毎に用例が違っていたりする。 例えば、シートベルトもバックル(シートベルトを差し込まれる側)はトヨタも日産も同じ呼び名だが、差し込み側をトヨタはプレートと呼び、日産はタングと呼ぶ。

取扱説明書が分厚くなったのは機能が増えたからだけではない。クレームや訴訟を見越して注意喚起を必要があるからだ。

取説のいたるところに「警告」、「注意」があふれている。

「守らないと重大な障害を負ったり、最悪の場合は死亡することがあります」

「守らないと身体の障害、車両の故障や損傷につながります」

しつこいくらい繰り返し書いてある。

スマートキーの電池交換の項目には、

「とりはずした電池をお子様が飲み込まないように注意してください」

シートベルトの項目には、

「バックルやシートベルトの巻き取り装置の中に異物がないか注意してください」

そんなことは言われなくてもわかる、と言いたいところだがメーカーもしつこいのは承知で書いている。

これは事故や故障が発生した後の訴訟を見越してのことなのだ。

取扱説明書に注意や警告の記載がなかった場合消費者側が、

「取扱説明書に注意喚起の記載があれば事故に至らなかった」、

とつけ込んでくるかも知れない。

裁判では立証が重要になる。

取説の記載の有無が審理の争点になると、メーカー側は“記載が無かった”ことの事故への影響の無さを立証しなければならない。 “記載があった”ことの有用性を議論するより“無かった”ことの影響のなさを立証する方がよほどむずかしい。

だから繰り返し警告、注意の文言を書く。

メーカーにしてみれば、取扱説明書のページが増えることくらい敗訴の負担に比べればよほど簡単なことなのだ。