コルベット グランスポーツ
先日、現行コルベットに乗る機会があったのでその時の印象を書いてみる。
実はコルベットに乗るのはこれがはじめて。
「今のコルベットはイイですよ。ガチッとした本物のスポーツカーです」、
そう薦められた。
今をさかのぼること35年前、通っていた学校の近くの駐車場にコルベットが停まっていた。三代目のコルベットで鮮やかなブルーメタリックに白い革シートがついていたように記憶する。そのコルベットのオーナーは長髪のミュージシャンのようないで立ちで白いマルチーズ(だったかチワワだったか)を連れてコルベットに乗り込む。
日本車にはない陽光に輝くブルーメタリックと白い内装、オーナーと子犬のいでたち。この光景がわたしのコルベットの原点なのだ。健在ならあのオーナーは還暦をとうに過ぎているはずだ。
感慨にふけっていると目の前にコルベットグランスポーツが横付けされた。
現行のコルベットグランスポーツは、V型8気筒 6153cc 466ps 64.2kg。7速マニュアルトランスミッションと8速オートマチックトランスミッションが選べる。
ドアを開ける。ドアレバーが表に出ていないデザインで長くて分厚いドアは開けやすいとはいえない。この開けにくさはF12に似ている。ぶ厚い断面のドアはふつうのセダンとまったく違う。
ウィンドウを全部下ろしてドアを開けると、サッシュレスのドアがカッコよく見える。
実利ない、謂れなき「ただのカッコだけ」感がスポーツカーにはあったほうがいい。
だからこうした開けにくいドアのスポーツカーは周囲にはばかることなく、バーンと思いっきり開いて乗り込むのがよい。コルベットのような派手なイメージのスポーツカーは多少、他人に陰口を言われるくらいでいい。
操作した感触は無骨そのもの、フレンドリーな感じがあまりない。座面は低い。このシートポジション、フロントウィンドウに対しても低くセッティングされていてF12より低く潜り込んだ感じがする。斜め後方の視界はあまりよくない(バックミラーとサイドミラーで実際に不足はない)。
ドライバーズシートと助手席の間には巨大な断面のセンタートンネルが通ってこの中に強力な馬力を伝える駆動系が収まっているのがわかる。グランスポーツよりもパワフルなZ06は659ps 89.8kg・mにパワーアップする。実際に伝える出力は巨大なのだ。
タイヤはミシュランPilot Super Sport 。フロント285/30ZR19、リア335/25ZR20。雨の日の轍や縦シワに乗ったらすぐ滑りそうな気がする。
ステアリングは低速で大きな舵角を与えるとゴリゴリ、グキグキと操舵系が軋む音がする。幅広タイヤの内側と外型で回転差が起きてこじられた小石がはじけて車体下にピシッとあたる。
実際この幅広タイヤ、路面のシワで一瞬進路が乱され、クィクィとステアリングが反応する。
パワーステアリングで操作は重くないが小径、太グリップでほぼ垂直にセットされたステアリングはスポーツカーそのものだ。
エンジンはそれほど高回転になりたがらない。さりとて低回転でドロロロという昔っぽい感じはない。
渋滞に巻き込まれながらストップ&ゴーを繰り返していると、
「もっと速度を上げろ、もっとスムーズな路面を走れ、こんな道路は嫌だ」、
コルベットが不満を言っているような気がする。
インテリアは量産コストを意識していて味気ない感じがする。実際コルベットは世界でもっとも量産されるスポーツカーなのだ。
Boseオーディオ、シートベンチレーションも標準装備だからオプションで選ぶものはあまりない。グランスポーツは迫力ある前後のスポイラーもついている。
1300万円以下であの出力感、スポーツ走行時の安定感はバーゲンだと思う。フェラーリの半分以下、4割の価格でこれが味わえる。
精度がすこしゆるい感じがして、どこかスキがある感じが逆にいい。
コルベットは世界でもっとも売れているスポーツカーなのだ。胸をはって乗るべきだ。